本書では、北海道のアルファリゾート・トマムや山梨のリゾナーレなど、いくつもの経営再建の話を事例から、ホテルサービス業に携わるために必要な考え方が記されています。
本書の言葉から主役を選ぶとするなら、それは「顧客満足度」です。再建に至るまでのプロセスは各旅館・ホテルで異なりますが、全ての事例において「顧客満足度をどう高めていくのか」から始まっています。
ただし再建にあたり、星野リゾート社長である星野佳路は、ファシリテートに徹し答えの提示はしません。再建に繋がるアイディアの積み重ねや実行者は、そこで働く社員が担います。お客様が何に不満を持っているのか、どうしたら不満を解消しさらには満足いただけるかは、実感値を持っているのはそれまでも働いてきたその場所の社員という考えが基本になっています。
たまにメディアで星野リゾートの再建実績や新たなチャレンジが華々しく取り上げられることもありますが、成功事例と呼ばれるに至るまでは、その仕事に従事する写真、ひいては星野リゾート社員のチャレンジの連続が隠れています。
「顧客満足度」とは全ての職業に通じる最重要指標の一つだと思います。メディアで取り上げられる再建の裏に隠れていた、顧客満足度を追いかける物語が本書には詰まっています。自身の顧客には何ができるのかを考えるきっかけになる一冊です。